ベネチアのアクアアルタに遭って最悪(11月は注意


電車でベネチアに夕方に到着すると綺麗に晴れていて、そして駅を出てすぐに運河がありその運河に大きな橋がかかりそこをたくさんの笑顔の色々な国の顔が渡り、運河をたくさんの船が流れ、まさに「水の都」の呼び名に相応しく思えた。明日以降雨になることが分かっていたのでホテルにキャリーバッグを置きカメラを持ちすぐに街に出た。

サンマルコまでまずは歩いてみる。Google マップでは徒歩で30分程度と出る。狭いベネチア本島には細道が張り巡っていてGoogle マップがないと目的地にたどり着かないことがすぐに分かった。そして高い建物があるゾーンになるとGoogle マップの精度が落ち今どこにいるのかすぐに分からなくなる。テキトーに歩くと行き止まりで悲しい気持ちになるがどこか街全体に既視感がありそれはつまりディズニーシーなのであるがテーマパークを歩いているようでそこまで気持ちは落ちない。しかしもうすぐ夜である。急いで夕陽に照らされるベネチアを撮りに回る。

サンマルコについた。もう中に入れる時間ではなかったが外観を楽しむ。サンマルコの広場ではたくさんの人たちが笑顔で写真を撮っている。

夜になり夕食。チッケッティという惣菜というかナナチキやLチキ、ファミチキのようなものがベネチアのお店の料理の定番のようでそれが有名な店に入る。チッケッティ4つに白ワインを頼む。17ユーロ。2000円程度。味的、量的にかなり残念な印象であったが、これが多分ベネチアなのだと思った。観光の街、とにかく全てが高い。

翌朝。ホテルを出ようとすると驚く。街全体が水没しているからである。2日目は何とか水没で被害はなかったが3日目はホテルの前が既にスネ中盤程度に水が溜まりホテルから出らない状況に陥った。しかしそんな僕に対して顔が黒目の中東?アジア?の方がビニール長靴を売ろうとしてくる。「20ユーロ」と言われたがここでそのビニール長靴を使って外に出られるなら安いと思えたが「10ユーロ」と返してみるとあっさり「OK」と言われ交渉成立となった。ふっかけられていた、危ない。しかしみんなこのビニール長靴をいくらで買っているのか。10ユーロでも高かったのか。そんなことはどうでも良いくらい街に出たかった。10ユーロで外を歩けるなら安い。

よく災害時に水没した街がテレビに流れる。その被害に初めて今自分が遭っている。自分の住む街でないから何となく楽しめている自分がいる。ビニール長靴が破けないか心配しながら街を歩く。あらゆるお店の一階に水が入り、店の人たちが困った顔を一切見せずに日常業務的に水を外に出すポンプをいじっている。旅行客は楽しそうに街をゆっくりジャブジャブ歩く。僕もまだこの時は楽しかった。そしてこの水没は昨夜降った雨が原因だと思っていた。

この水没について今更であるがこの先の予定を組むに当たって考慮しないといけないと思い調べてみたら「アクアアルタ」というこの時期ならではものらしい。2人の友人からLINEが届く。「ベネチア、ニュースなってるけど大丈夫か」とLINEニュースなどのキャプチャが届く。記録的な水没具合らしい。アクアアルタ、初めて聞いたが一生忘れない、と思う。新宿アルタ前集合、で思い出しそうである。

翌日は大雨で勿論アクアアルタで水没具合が更に酷かった。水没具合が酷過ぎたせいでスクオーラグランデディサンロッコという有名な建物に入れなかった。また大変な想いをしてたどり着いた安藤忠雄改修の美術館、プンタデラドッガーナは火曜日定休日で入れず涙を飲んだ。翌朝最終日に滑り込もうとするも勿論アクアアルタが酷く諦めることになった。

水没した街中を歩くことに楽しさを感じたのは最初の1時間くらいでそれ以降は辛さしかやかった。行きたいところになかなか行きづらい。だからヴァポレットという観光客や市民を乗せる大きめの船をたくさん利用した。駅前からサンマルコまで30分くらいかかった。晴れた初日の徒歩と同じくらいであるがアクアアルタのベネチアの街中をその時間では絶対に歩けない。ヴァポレット様々であり、ベネチアの記憶は基本的に煩いヴァポレットでの記憶が大半を占めた。

ベネチアでの最後の夜を楽しもうと雨の中、ベニスジャズクラブというジャズを演奏してくれる店に向かう。雨でかなり寒い想いをしたが、店の中は暗く「あれ?」と思いよく店内を見ると紙が置いてあり、今日は休みだと言う。ベネチアではとことんついていなかった。くそ、と思い、どこかで飲もうかと思ったがとても寒くもうホテル戻ろうという気持ちが大きくなりホテルに戻ることにした。

ヴァポレットは超満員であり、ギュウギュウ詰め。こんなに混んだヴァポレットは初めてであった。ベニスジャズクラブに行けていたらこんな目に遭わずに済んだのに、とまたネガティブなことを思う。ホテル前の停留所にヴァポレットが到着、ホテルにつく。シャワーを浴びる。YouTubeを見たりNewsPicks動画を見る。

ホテルに着いて1時間ほど経った頃。

外の様子がおかしい。

台風みたいなものが来て強風で窓がバタバタと震え開きそうになる。開きそうになったタイミングで窓の下の隙間から雨水が部屋に入り込む。もうホテルの部屋は外同然で、もし窓が開いてしまったことを想像する。部屋に散らかった服や紙が舞い上がり一部が外に出る。それはまずいと、部屋の片付けを始める。いつもより片付けが短く感じる。こんなに簡単だったのか。この部屋に今、片付けの妖精がいる、と思うくらい。

窓のバタバタは終わらない。いやどんどん酷くなる一方。不安。気を紛らわせようと動画を見ようとするがホテルのWiFiにトラブルがあったようでネットに繋がらない。レンタルのWiFiを使うには勿体ない。もう窓のバタバタを楽しむ、しかない。楽しめるわけがない。ベネチア、最悪である。最悪、最悪、最悪。安藤忠雄のも行けなかった。微妙にビニール長靴がパンクしてたっぽくて水が浸水して靴が汚れた、最悪、多分汚いよな、下水は混ざっていないか、少なくとも犬の糞尿は混ざっているよな。

思い出す。ベニスジャズクラブの本日は休みの紙を。確か下に波のマークのようなものがあった。あ、多分あれはアクアアルタ、そして今の嵐を想定してのことだった、と。いや、絶対にそうである。と、考えると寄り道せずにホテルに真っ直ぐ帰っていて良かった。外を眺める。ホテルはベネチアの駅から多分一番近いホテル。そのホテルの5階で運河の様子やヴァポレットの乗り場の様子が簡単に眺められる。やばい。ヴァポレット乗り場が水で埋もれている。水没。それも今まで見た以上の水没。明日、このベネチアを出て、フィレンツェに行けるのか。ベネチアを出る際、あの重いキャリーバッグを持ち上げて駅に辿り着けるのか。

いつの間にか寝ていた。外は雨が止んでいる。良かった。色々チェックアウトの準備を行う。朝食を食べるために一階に向かう。ホテルの部屋を出る。エレベーターの前に行く、ボタンを押す。ん、動かない。何度押してもエレベーターが作動する音がしない、ボタンが光らない。何かおかしい。5階から階段で1階に向かう。すぐに分かった。ホテルの一階が酷い浸水をしていたらしい。ホテルのスタッフはみんな長靴でモップを持って床を拭いている。エレベーターは扉が開いている。昨夜の一階の様子を想像するだけで恐ろしい。ベネチアに住む、過酷しかない、そう思った。みんな大変そうに長靴を履いて頑張っている。ホテルの宿泊者はその様子を楽しむように彼らが働く様子を見ている、僕もそうだと思う、どこか他人事。今日このホテルを安全に出られるのか、その時までにエレベーターは動くようになっているのか、キャリーバッグを持って階段を降りたくない。そんな自分のことばかり考えていた。

水位は朝食を食べているうちに上がっていた。午前10時半をピークに水位は上がる。膝くらい。小柄な人は長靴を履いてもダメだ。もう午前中は外に出られない。安藤忠雄改修の美術館を諦める。ホテルのロビーで待機。宿泊者もみんな外に出られない状況が続いたがどこか楽しそうである、多分一泊目の人たちだろう。

正午に向かって水位が下がる。13時の電車に乗るために外に出る。キャリーバッグを持ち上げる。ホテルにこもってた多分1泊目の人たちが僕を見つめ、僕が外の水没した道に作られた橋に向かい橋に上がった時拍手した。僕はホテルの彼らに向かい会釈した。僕のビニール長靴は力尽き浸水していた。うわ、と思ったが何事もなかったかのように駅に向かう。橋が終わる、もう駅だ。ビニール長靴が大量に捨てられたゴミ箱に僕の穴の空いたビニール長靴を捨てた。そのビニール長靴をすぐに多分ベネチアに到着したばかりのどこかの国の婦人が掴み持って行った。


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