足を踏んだことにしない人


帰りの電車で、目の前に酔っ払った若い男女2対2のグループが立ち、僕はそのなかの男の後ろに立つ。その男が笑った反動で、電車の感性の力も相俟って後ろによろめき、彼の左足が僕の左足を踏んだ。

足を踏むという事故は、どっちが被害者、加害者か明確で、明らかに僕は被害者。割と勢いよく踏むものだから、なんだ?とカメムシだったら臭いのを多分出しているんだけど、そんなのでないから別に何も反応しないけど、それは後にくるであろう謝罪を想定してのこと。

僕の足を踏んだ男の左足は自然に浮き、僕の足を離れた。次は、謝りのはずだが、それは一切ない感じで、彼は会話に戻った。彼は足を踏んだことにしなかった。そういうスルーの仕方があるのか。足を踏まれたことより、足を踏んだ犯人が足を踏んだことにしないことの方が、痛い、痛い。

謝られたいわけじゃないけど、何よりなかったことになるのが、一番つらいんだよな。

 

 


You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です