島田潤一郎著「あしたから出版社」(夏葉社)を読んだ感想


  
本を一気買いしたなかに島田潤一郎さんが書かれた「あしたから出版社」という本があった。自分がなぜこの本を買ったのか今でもきちんとわからないが「あしたから出版社」という唐突なタイトルから、色々と想像でき、それは出版社を作る話というベースは変わらず、出版社を立ち上げるきっかけの部分で、本が嫌いな人が誰かの命令で出版社を起業することになったとか、CDが売れないから本を売ることにしたら、iPadが出てきたとか、何かから出版社に変わったみたいに想像したのだが、違った。そもそも「就職しないで生きるには21」というシリーズの本で、はじめの「何か」がないのは表紙から読み取れたはずで、それくらい漫然と本を見渡して、奇跡的に購入した本だ。

本棚について

いきなり脱線する。自分の話だ。

僕は大学に入ってから本を読むようになった。それまで中学時代に本厚木の有隣堂で飯島愛のプラトニックセックスを立ち読みしただけで、その他、週刊誌をコンビニで読む程度。大学に入ってから、勉強で必要なものと雑誌は読むようになって、研究室に入ってから、先生が読書を暗に勧めてくださって、先生の本棚にあった社会学系の本を読むようになった。研究と関係ないジャンルの本に手を出したのは僕くらいか。先生の部屋は、本棚で囲まれる。本の壁だ。本屋みたいだ。そんな環境にいたことがなかったし、想像もしていなかったし、本なんか嫌いだったけど、その本棚に自分が包まれた時に、最高の秘密基地感を感じて「僕もこういうの欲しい」と思った。遠くから見ると壁だが、寄ってそれぞれのタイトルを見ていくと、場所ごとにカテゴライズされていることがわかる。この作家多いなぁ…という趣向も見えてくる。つまり本棚という有限の場所には、その人のセンスが見えて、意外な発見もあったりして楽しく、そのうち、先生がこの本棚をどういう風に、どういう気持ちで眺めているんだろうと思うようになった。先生のことを考えるようになった。この本棚と先生が同期した瞬間だった。好きとかそういうのではないのだが、どんなに近い人でもその人のコアな部分ってわからなくて、でも本棚を見れば、わからなかった部分が必ずいくつか見える。それを探すのが楽しかった。これも研究室で教えてもらった大切なこと。

あしたから出版社

「あしたから出版社」は島田潤一郎さんご自身の話である。島田潤一郎さんは現在、夏葉社という出版社を一人で営業していて、その夏葉社を立ち上げるまでの話や立ち上げてからの本を出すスタンス、仕事の話など、気持ちの部分を多く含みながら「あしたから出版社」の中には示されてる。
ガイドや図鑑に対して、膨大な情報がこの本の中に詰まっている感覚が好き、というような箇所に共感できて、このような本に対する共感ポイントがたくさんあるため、面白い。この方は本当に本が好きなんだ、と素直に思えてくる内容で、上の項で示した僕の本棚についてのエピソードのような内容が島田潤一郎さんのエピソードに、そして定義に変わって示されている。

島田潤一郎さんは、本を読む限り、不器用で意思がかたい。こういう方は仕事を一緒にする上で面倒なイメージがある。しかし、違う。周りから愛される人物像が読みながら浮かび上がってきた。島田潤一郎さんができない箇所を誰かかサポートする、そしてサポートしてもらうために島田潤一郎さんは手紙で気持ちを表現して相手に伝える。周りが島田潤一郎さんに協力していく事実がまた愛される人柄の証明になって、島田潤一郎さんに対して、出版社という本の裏側の人間である島田潤一郎さんに対して興味を抱かずにいられなかった。

自分をすごく見せる本が多い中で、ダメな自分を曝け出す「あしたから出版社」は島田潤一郎さんの謙虚さというか、素直さが全面に出ていて、その謙虚さと素直さに心を持っていかれる体験は読んでいく楽しさの一つだった。また「就職しないで生きるには21」の役割として、「そういう生き方もあるだ」だけでなく、読んだ後に「わたしにもできる」という希望を抱かせる力がある気がして、コンセプトの枠を超えてくる様がズルいとすら思うくらい素晴らしいと思った。


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