電車の中の盲導犬


  
今朝、六本木に向かうために中野坂上で大江戸線に乗り換えた。長いエスカレーターを降り、「まだ続くのか」とその下の階段も降る。その先に、つまりホームに黒のラブラドールレトリーバーがいて「お」と少し驚いた。社会人になってから、初めてみた光景であった。

盲導犬だ。

六本木に向かう大江戸線がホームにきた。大江戸線から溢れるように人が降りる。降りたと同時に、ドアを閉めるための音が鳴るから、改めて、あの音に対して意地悪だ、と思ったけど、そんな音に動じることなく、盲導犬は電車に乗った。僕は続いて電車に乗った。

電車に乗るとみんな驚いた顔になる。電車の中では黒のラブラドールレトリーバーは目立つ。一瞬、顔が強張るのだ。街でラブラドールレトリーバーを見かけると微笑ましくなっている人間の反応は、嘘だったのかなぁとそう思うくらいの瞬発的な反応はきっと真意なんだろうけど、すぐに普通の表情に戻った。

盲導犬は電車の中では、伏せをするような姿勢で過ごす。ほぼ満員状態での伏せは危険で、何も知らずに漫然と電車に乗ってくる人は、伏せをしている犬に気が付かずに、犬の脚スレスレを踏む。

「危ないです」と声をかけると、相手は中国の方で、多分言葉は通じなかったけど、理解してくれたようだった。脚スレスレのところに人の足がきても盲導犬は動じなかった。すごいなぁ、と思った。きちんと調教されているのだ。

前にニュースであった盲導犬を傷付けるという事件を思い出した。「痛い」という反射的な動作も、きっと盲導犬は最小限に抑えるのだろう。人間はできるか、これは凄い技術であり、何かに対する優しさ、思いやりでもある。

盲導犬は、教えられたからそうしてるのか、主への思いやりなのか、どっちかはわからないけど、思いやりに見えた。

盲導犬は新宿のアナウンスが鳴ると起き上がった。主がアクションをしたのかはわからないけど、さっと起き上がった。それと同時に周りの人間も少し警戒した様子だった。

新宿に着くと、慣れた様子で電車を降りて、東京の人間のスピードでいなくなった。

日常の積み重ねなのだろうけど、一瞬で素敵だなぁと思った。忘れていたようなレベルの思いやりを見た気がした。


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